全従業員全員経営で日本の美容技術を世界へ。
織田 光一Oda Koichi
株式会社オーエス
代表取締役
苦難からの復活。トップダウンからボトムアップ型企業に
親友の死を悲しむ間もなく、織田は300人の従業員が働く企業のナンバー2として、判断に迫られていた。会社のこれからについて、社員も含め、関係者全員に伝える責務があったからだ。
「潰した方が楽。継いだってどうせ立ち直らない。そのような意見が多かったです。でも私は親友と興した会社を捨てるという選択はできませんでした。ましてや2人で育ててきた300人にもおよぶ従業員もいましたから」
こうして代表となった織田は、同時にもうひとつの覚悟を決めていた。火の車の原因となった通信事業の売却だ。それだけではない、通信事業のマイナスを埋めるために、営業主導で新規契約ばかりに走っていたWeb事業の改革だ。通信事業は同社の創業事業であり、当時はまだ営業会社の色が濃かった。当然、社員からは反発の声が上がった。
「社員一人ひとりと面談し、会社の状況ついて丁寧に説明しましたが、通信事業の事業譲渡を受けいれてくれない社員もいました。中には冷たい眼差しを向けるメンバーもいて、つい最近まで同士だったメンバーからそのような目で見られるのが、本当に辛かったです」
苦渋の決断の先にあったさらなる試練を、織田は経験する。しかし織田は改革を続けた。そのときの心情を、こう吐露する。
「前社長は優秀でカリスマ性があり、多くの社員から慕われていました。ただ優秀であるがゆえに、決めごとの多くは社長が決めるトップダウンでした。一方、私には才能もカリスマ性もありません。自分のやり方で、会社を経営していこうと思いました」