
全ては顧客の成功の為に。360°最高のシルエットを提供する ファッションの先にあるサクセスを届けたい。
岡本 英久OKAMOTO HIDEHISA
株式会社ハリースタイル
代表取締役
顧客ゼロ、負債2,000万円からの社長業をスタート
フィッターである女性スタッフは残ったものの、頭脳部門しか経験のない岡本にとっては「顧客ゼロ」からの社長業のスタートだった。さらに1年後岡本は大きな決断をする。まず別会社設立の絡みで2000万円近くなっていた負債を含め、資本金2万円のハリースタイル社の全株式を買い取った。
雇われの代表取締役社長から、経営権を持った筆頭株主になったのだ。経営権をもった岡本は、すぐに駅前にあった一号店を閉じ、売上の柱であった卸業も辞め、サンクコストとして別会社からは訣別した。強みを活かせない事業部を全て廃止した。それでも崖っ縁状態の自転車操業の日々は長らく続き、シャツ1枚の注文でも千葉県松戸市から神奈川県川崎市まで向う時もあったという。
「自分だったらこんなテーラーから買いたい。こんなシルエットのスーツ・シャツなら着てみたい。という事だけを徹底的に追及しましたね。自分は縫えないし職人じゃないから、職人とお客様の最高の仲介人になろうと思いました。「お客様の理想」を体現するために職人と喧嘩をよくしてましたね。『もっとここを細くしてシルエットを出してくださいよ!』って。数人の職人から『もうハリースタイルの商品は縫いたくない。』って、契約を打ち切られた事もあります。」
当時から岡本の接客・採寸スタイルは独特だった。新規顧客には生地やデザインといったファッション販売では当たり前と思える接客をせず、「どういう自分になりたいのか?どう人に見られたいのか?」に特化した会話を重ね、その顧客にとって「本当に必要なスーツ」を提案した。またきめ細かい採寸により、顧客の体型を把握し深い信頼を勝ち取った。こうした独自の接客・採寸スタイルに好感を持ったユーザーがリピーターとなり、顧客候補を紹介してくれたことで、徐々に岡本の顧客は増えていった。また片腕だった女性スタッフの真摯に顧客と向き合う姿勢も功を奏し、新生ハリースタイル誕生4年後には負債を全額返済できた。
その後直ぐに、長年温めいたアイデアで2つのオンラインストアを展開し、テレビ番組や雑誌の特集に載るまでに事業を順調に拡大している。
そんな岡本に、なぜ社長を引き受け、2000万円近い負債の会社を買ったのか聞くと返答は意外な言葉だった。
「社長なんてやりたくなかったんですけどね。やる人がいないから仕方なく社長になりました。
負債に関しては完済できるとは思っていました。経営改善し、さらに自分も営業を開始すれば。あくまでもシミュレーション通り4年間進めばですが。でも返済したら辞めようと思っていました。」
と、岡本は笑いながら当時を振り返る。こういったインタビューでは、建前上綺麗な言葉でまとめるか、志の高さを話す社長が多い。あっけらかんと、正直な言葉で伝えることも岡本の魅力の一つだ。