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伊藤 歩美Ito Ayumi
株式会社ハリースタイル
執行役員
職業・フィッターとして本格的にスタート
翌年には初代社長が退任し、岡本が新代表に就任。ハリースタイルは新体制としてスタートし、伊藤に求められる役割はさらに大きなものになった。
重圧を感じながらも、伊藤はフィッターとして成長するために、岡本の持つ知識や技術を貪欲に吸収し、自分でもスーツに関する雑誌や業界誌を読み漁っていった。街中を歩いていると、自然と人の体形に目がいき、頭のなかで採寸が始まるようになった。まだまだ経験は浅くても、伊藤は間違いなくフィッターとしての道を歩み始めていた。
「本当にいろんな体形の方がいるんです。標準体型の方はともかく、ボディビルダーのような方や、手の回らないような大きな方、小柄で痩せている方など、最初は採寸に苦労してばかりでした」
失敗も経験した。ある顧客から、「シャツの裾の長さはこのくらいがいい」とリクエストがあった。それを鵜呑みにしてシャツを作ったところ、裾が短すぎて、腹部の途中までしかなかった。実はその顧客は大柄で、おなか回りもあったため、シャツの長さが足りなかったのだ。
「結局シャツは作り直しになってしまいました。お客様は『恥ずかしくて着られないよ』と笑ってくれましたが、体形に合わせてどんなサイズで作ればいいのか、私がもっとわかっていたら防げたなと。あと、お客様の言うことをそのまま聞くのでなく、最適なサイズになるように、こちらからも提案しなければいけないことも痛感しました」
そのようにほろ苦い経験をしながらも、伊藤は着実に成長していった。ハリースタイルではそのころから、フィッターは岡本社長と伊藤の2名体制に。採寸の技術や経験では岡本の方が勝るが、伊藤の接客に好感を持った顧客から指名されることが増えていった。
「ハリースタイルで注文したオーダースーツを、大事な商談のときにだけ着ています、というお客様がいて。勝負服として使ってもらえて、うれしいです。デザインやサイズ感を気に入ってくださり、うちでしかスーツもシャツも買わないようにしている、という方もいます。そういったお客様と、関係性が続いていくのも喜びです」