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「神は細部に宿る」 天賞堂の“音までつくる”ものづくり魂

新本 桂司Nimoto Keiji

株式会社天賞堂

代表取締役社長

ロールス・ロイスと称される鉄道模型製作で培った“ものづくり魂” 音までこだわる天賞堂オリジナル16番ゲージ

 先の実績の裏には、天賞堂のものづくりに対するこだわりがある。その象徴ともいえるのが、鉄道模型だ。冒頭ではあえて紹介しなかったが、天賞堂は時計・宝飾品、外商、そして鉄道模型と大きく3つの事業柱があり、鉄道模型事業は新本の祖父が趣味であったものを事業化し現在に至る。D51など誰もが知っている蒸気機関車から、特急・急行列車、客車、EF58やD051等の電気・ディーゼル機関車、キハ等の気動車、さらには船舶まで。オリジナル製品も数多く手がけ、愛好者からは冒頭の時計と同じく「TENSHODO」のブランドで人気を集めている。

「日本の鉄道模型は『Nゲージ』が主流ですが、弊社が扱うのはNゲージより倍近い、実車1/87の大きさのHOゲージです。実は海外ではHOゲージの方が人気があるんですよ。大きいため、ドアなど細部がよりリアルに表現できるからです。車体を持ったときの重量感も魅力です。そして走らせたときの迫力も本物により近い。本物という点では、天賞堂では音にもこだわりました。機関車の汽笛、ブレーキ音、レールのジョイント音、列車がすれ違うときに生じるドップラー効果などの音が出るシステムを、海外の専門家と組んで独自に開発。このリアルなサウンドも、天賞堂鉄道模型の人気のひとつです」

鉄道模型には、真鍮製、ダイキャスト製、プラスチック製とあるそうだが、先述した車両のディティールを最も事細かに表現できるのが真鍮製だ。一つひとつの部品を職人が丁寧にはんだ付けし組み立てていくことで、実車に近い質感に仕上がる。

中でも天賞堂はクオリティが高いため「鉄道模型のロールス・ロイス」と称される。イギリス、ドイツ、アメリカといった海外からの評価も高く、実際お店にも外国人客の姿が毎日見られ、40万円を超える価格にも限らず、人気の高い年代物の特急シリーズなどは、発売と同時に何千両という車両が即完売している。