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顧客への「営業活動」は最大の機会損失。希有なビジネスモデルで「営業活動を不要」に。未知なる領域を攻め、目標を達成する。

中平 勝也Nakahira Katsuya

株式会社アールアート

代表取締役

未知の領域を攻める事にやりがいを感じる。私の人生にとって「営業活動」する時間は最大の機会損失。

 中平と同じように、不動産オーナーとなり、いわゆる不労所得を得ようとする人は大勢いる。そこで考えたのは誰もやっていない、ニッチなマーケットで勝負することだった。

「冒頭で説明したように、私が扱うのは業界でいうクズ物件です。しかし見方を変えれば、ライバルがいない市場、ブルーオーシャンだということです。未知の領域ですから失敗することもあります。しかし誰もやっていないことをやることに対して、私はやりがいを感じるタイプでもありました」

中平が大手商社を辞めたのは、給与が安いことだけが理由ではなかった。まわりには早慶は当たり前の超一流大学を出たインテリばかり。ここで勝負しても自分には勝ち目がないと感じたからだ。そして中平のパーソナリティを紐解いていくと、もうひとつの重要なキーワード「反復継続」が浮かび上がってくる。

「不動産など、金額が大きい商材を扱う営業では、どうしても一発相手を騙して儲けてやろう、という輩が大勢います。その時は売れるかもしれません。でも続きませんよね。続かないということは、常に営業活動をしていないといけないので、レースにかける時間が奪われてしまいます。それは私にとって最大の機会損失になり、私の求めるビジネスではありませんでした」

こうして生み出されたのが、流動性の低い不動産を投資価値のある物件にリノベーションをかけ、一般顧客ではなく、継続的な繋がりのある投資家に販売する、アールアートのビジネスモデルなのである。図らずも、レースへの想いがマーケティングの理想である「営業活動を不要」にしたのだ。実際、同社の顧客はほぼ固定で、新しい物件を見つけたときは、顧客の顔が浮かぶほどだという。

「正直、不確定要素が多い物件ばかりなので、思ったような利回りを得られないケースもあります。でもその時は謝るしかありません。ただ次の物件で取り返します、と付け加えます。そもそも難しい物件を紹介するときは、最初から正直にお客様に伝えています」

真摯なのは顧客に対してだけではない。あまりにも状態が悪く、リノベーション費用が想定を上回るケースでも同じだ。その場合は、自社で持ち出し、顧客に迷惑をかけるようなことはしないという。

レースのためにやっているビジネスではあるが、やりがいも感じているという。冒頭で書いた通り、社会課題に直結する内容だからだ。捨てられたような物件を再生する、建築の仕事自体の魅力も感じている。また顧客との関係性や信頼も、ビジネスをやってみて得たものだと、中平はレーサーではなく、ビジネスオーナーの表情で話す。